「Application Architecture for .NET」を読んだ - 3部(後編)
.NETのエンタープライズアプリケーションアーキテクチャ 第2版 (マイクロソフト公式解説書)
- 作者: Dino Esposito,Andrea Saltarello,日本マイクロソフト(監訳),クイープ
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2015/06/04
- メディア: 単行本
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「Application Architecture for .NET」を読んだ - 1部
「Application Architecture for .NET」を読んだ - 2部
「Application Architecture for .NET」を読んだ - 3部(前編)
の続き
第三部サポートアーキテクチャ(10, 11, 12, 13章)のメモ。
TL;DL
- CQRSはトップレベルのアーキテクチャではなく、テクノロジに依存しないアーキテクチャ
- ある程度設計パターンに依存するが、CQRSはパターンそのもの。CQRSはシンプルかつ強力で、一般的なアプリケーションに適している
- CQRSはドメイン層を切り離すことと、読み取り/書き込みに別々のモデルを使用することを提唱する
- 最大のポイントは、コマンドをクエリから引き離す
- 読み取り用(1つの中間層がデータを取得する)/書き込み用(1つの中間層がシステム状態を変更するコマンドを処理する)にストレージを用意することになる
- Eventは分析と実装に対してタスクベースのアプローチを推進する
- CQRSの真価は一方を最適化することでもう一方が機能しなくなるというリスクを負うことなく、コマンドとクエリのパイプラインを自由に最適化できる点にある
- Cutting Edge - 一般的なアプリケーション向けの CQRS
- Cutting Edge - CQRS とイベント: 強力なコンビ
10. CQRSの紹介
- DDDの当初のビジョンに不可欠なのは、境界付けられたコンテキストに対して推奨されるアーキテクチャです
コマンドとクエリの分離
- 一般的に言えばソフトウェアシステムで実行されるアクションはクエリかコマンドに分類できる
- クエリ: システムの状態をいかなる方法でも変更せず、データを返すだけ(読み取り)
- コマンド: システムの状態を変更する。ステータスコードか確認応答を返すとしてもそれ以外のデータは返さない(書き込み)
- CQRSではDomain層を1つではなく2つ使用する
- CQRSの利点
- 設計の単純化
- スケーラビリティ向上の可能性
クエリスタック
コマンドスタック
- コマンドスタックの関心はアプリケーションの状態を変更するタスクのパフォーマンスだけ。アプリケーション層は従来通り、プレゼンテーションからリクエストを受け取りそれらを実行する手はずを整える
- コマンドとはバックエンドに対して実行されるアクションのこと(単一方向)
- ex. タスクを実行したユーザがフィードバックを期待して待つケース
- コマンドとクエリが同じコンテキストに属するのであれば問題はない
- 別々なら、1つは対話形式で利用され、もう1つはプログラムから開始される
- 入力を処理するためのフロントエンドリクエストはアプリケーション層(受信者)に送信されるメッセージと見なせる
- メッセージはこの後の処理に必要なデータを含んだDTO
public class Message {
// 必要に応じて一般的なプロパティを定義
// 但し、クラスはプロパティを持たない単なるマーカーでも構わない
}
- メッセージはコマンドとイベントの2種類がある
- コマンドは命令型で明示的なリクエスト
- 1つのハンドラに送信される
- システムによって拒否されることがある
- 効果はシステムの状態に応じて異なることがある
- コマンドが境界付けられたコンテキストの境界を超えることは無い
- イベントは既に発生していることの通知としての役割を果たすメッセージ
- イベントを処理するハンドラはいくつ指定しても構わない
- イベントのサブスライバがそのイベントが発生した境界付けられたコンテキスト内にいるとは限らない
- 既に発生している何かを表す単純な理由によりImmutableとみなすべき
- コマンドは命令型で明示的なリクエスト
- イベントソーシングは、メッセージを保存することで詳細で包括的な監視ログを形成できること
- システム内で発生したイベントは後から確認出来る、イベントを再現、推定することが可能
- コマンドを非同期で実行する必要がある場合は、コマンドではなくイベントとして設計すべき
- コマンドとイベントはどちらもMessageの派生クラス
- イベントに関しては何かが発生したことを反映した名前にすること
- ex. Is-Gold => CustomerReachedGoldStatusEvent
// Command public class CheckoutCommand: Message { public string CartId { get; private set; } } // Event public class DomainEvent: Message { // 一般的なプロパティ // イベントが発生した時間を追跡するtimestamp // イベントを発生させたuserId // イベントをハンドラで処理できるかのversion } public class OrderCreatedEvent: DomainEvent { // イベントの名前はより詳細で明確に }
- コマンドはコマンドバスと呼ばれるプロセッサにより管理
- イベントはイベントバスと呼ばれるコンポーネントによって管理
- コマンドバスはメッセージ(コマンドを実行するリクエストとイベントの通知)を受け取り、それらを処理する方法を見つけ出す単一のclass
- コマンドバスは実際に処理を行うのではなく、処理できるハンドラを選択する
- コマンドと関連するイベントを処理するプロセスはSagaと呼ばれる
- Sagaコンポーネントは、論理的に関連するメソッドとイベントハンドラを集めたようなもの
- ドメイン層はコマンドスタックに配置され、はるかに単純なデータアクセス層はクエリスタックに配置される
- 現実のシステムの多くは読み取りと書き込みに単一のDBを使用する
- コマンドモデルとクエリモデルを別々に定義したとしても同じDBを共有することは可能(どうのようなシナリオに取り込むかによる)
イベントバス
- bus: データをやり取りするための伝送路
- コールバックメソッドを呼ぶタイミングでイベントを発火し、コールバックインタフェースの実装ではなく、イベントを常時監視するメソッドを用意しておいて、発火したタイミングで呼び出されるようにする仕組みとして、EventBus を使うことで、インタフェースによる依存関係を整理したり、コールバック地獄を解消したりすることができる
- EventBus という中間層を介したコミュニケーションを用いることで、ModelとControllerは直接結合することがなくなることで、Controllerが実装したコールバックインタフェースの管理をしなくても良くなる
11. CQRSの実装
クエリスタックの実装
- クエリスタックのドメイン層がほとんど空でDBに対して実行される単純なSQLクエリとデータにをプレゼンテーション層へ届けるためのDTOだけで構成される
- クエリスタックは出来るだけ単純に、上位レイヤーにはDTO(データ転送オブジェクト)を使って返す(それらはViewModel)
- 読み取りファサードは主にデータモデルとDBコンテキストによって構成される
- 高階関数で加工すれば、大量のDTOを作成せずに済む
コマンドスタックの実装
- コマンドとイベントの観点からワークフローを定義することでアプリケーションのユースケースを実装する
- ユーザからの入力などはコマンドバスに渡されるコマンドになる。さらに処理するには、コマンドバスがコマンドを登録済みのハンドラに渡す。コマンドの処理によりさらに別のコマンドとドメインイベントによって前進するプロセスが開始される
- コマンドをワークフローのコンテキストで処理するプロセスをSagaと呼ぶ
- Sagaはコマンドバスと連携することで、ユースケースを実装するために実行しなければならないタスクの手はずを整える
- コマンドをワークフローのコンテキストで処理するプロセスをSagaと呼ぶ
12. イベントソーシングの紹介
- DDDはデータモデルの作成よりもドメインモデルの作成を推奨する
- CQRSによりコマンドをクエリから離した瞬間にタスクという観点から考えるようになる
- タスクはドメインイベントとアプリケーションイベントに深く結び付く
- イベントソーシングはイベントをツールとして使う
- ドメインモデルではなくイベントを永続化する
-
イベントを中心に考える - 様々な出来事(イベント)の結果、状態が変更する - 状態はイベントの結果にすぎず、本質ではないのでないかという考え方
イベントを記憶する(状態は記憶しない)
- 何が起きたかだけを淡々と記憶する
- イベントソーシングの凄い所
- 完全な履歴が手に入る
- 任意の時点を再現出来る
- 問題点
- パフォーマンス(最新の状態を得るため、毎回膨大な量のイベントをリプレイスする必要がある)
- バージョニング(仕様変更が起きたら過去のイベントをどう処理するか)
- 実装が複雑(イベントを記憶してリプレイスする機構)
イベントの躍進
- イベントソーシングに言わせれば、イベントが発生すればそのイベントに関連付けられているデータの集まりが保存さる
- イベントの永続化に対処するには、イベントを記憶するためのイベントストア要素が必要になる
イベントソーシングアーキテクチャ
- イベントの再生
- ビジネスエンティティの状態を再現する
- 多くのシナリオでは、イベントの再生は非同期処理の一部
- 多くの場合は、数10個程度のイベントが対象となる為それほど時間はかからない、それが問題となるならデータスナップショットを使用する
- スナップショットはシリアライズされた状態の集約を含む、永続キャッシュ
13. イベントソーシングの実装
- 「最後に確認された正常な状態」ではなく、「発生した出来事」を追跡する方がビジネスとして意味がある場合には、イベントソーシングは妥当なパターンとなる
- イベントソーシングの実装 +α
- 追跡を目的としてイベントを記憶する + 対象となる集約の「最後に確認された状態」も保存する
イベントソーシングを使用する理由と状況
- イベントソーシングによりシステムの周りで発生するあらゆる事を追跡出来るようになり、アプリケーションロジックが処理するコンテキスト/コンテンツをアーキテクトが推測できるだけの柔軟性が確保出来る
イベントソーシングに適したシナリオ
Command Bus
public class Bus { private static readonly Dictionary<Type, Type> SagaStarters = new Dictionary<Type, Type>(); private static readonly Dictionary<String, Object> SagaInstances = new Dictionary<String, Object>(); private static readonly EventRepository EventStore = new EventRepository(); public static void RegisterSaga<TStartMessage, TSaga>() { SagaStarters.Add(typeof(TStartMessage), typeof(TSaga)); } public static void Send<T>(T message) where T : Message { // Implement } }
- Saga: Eventを処理するプロセス
public class MatchSaga : SagaBase<MatchData>, IStartWithMessage<MatchStartedEvent>, ICanHandleMessage<MatchEndEvent>, ICanHandleMessage<PeriodStartedEvent> { private readonly EventRepository _repo = new EventRepository(); public void Handle(MatchStartedEvent, message) { // SagaのIDを設定 SageId = message.MatchId; // 試合情報が更新されている事を通知 NotifyMathcInfoChanged(message.MatchId); } public void Handle(MatchEndEvent, message) { // 試合情報が更新されている事を通知 NotifyMathcInfoChanged(message.MatchId); } }
// このmessageがbusにpushされるとsagaが起動する var domainEvent = new MatchStartedEvent(matchId); Bus.Send(domainEvent);
- イベントの永続化
EventRepository
- 通常、イベントはDTO(プロパティ)の集まりであるので、DBのレコードとして簡単に保存可能
- イベントの再生
- 記録されたイベントから集約の状態を再現、一連のイベントをループで処理する
public IEnumerable<EventMapper> GetEventStream(String id) { return DocumentSession.Query<EventWrapper>() .Where(t => t.MatchId == id) .OrderBy(t => t.Timestamp).toList(); }
集約snapshotによるイベントソーシング
- イベントソーシングは自然な選択でないといけない。イベントを追跡する事が重要でその方が簡単であるなら、イベントソーシングを利用しそこから状態を再現するか、集約をスナップショットとして永続化するか